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外国人を自国の医療機関に誘客するメディカル・ツーリズム(医療観光)

2010-06-03 11:55:29

中国やアラブなどの富裕層をターゲットにした新たなサービス産業として、各国が顧客獲得にしのぎを削っているそうです。
そんな中、立ち遅れ気味だった日本の観光庁も2010年度から、中国人富裕層らをターゲットに、検診や治療と観光を組み合わせた「医療観光」をPRする取り組みを本格的に始めるとのことです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ビザ緩和で中国の「医療観光」人気に拍車
政府が7月から中国人向け個人観光ビザの発給要件を大幅緩和する見通しとなった。日本国内で観光を楽しみ、併せて先進的な検査や治療を受ける「医療観光」(メディカル・ツーリズム)の人気が中国人の間で高まっているが、政府方針はこれをさらに後押しすることになりそうだ。
がんの早期発見につながる*PET(陽電子放射断層撮影)など、最先端のがん検診施設を備える聖授会OCAT予防医療センター(大阪市浪速区)は、「日本旅行」(本社・東京)を通じ、昨年4月から中国人観光客の受け入れを始めた。同7月には日本が中国人向け観光ビザの発給を認めるようになったことも追い風になり、2009年度は約40人が受診。今年度は100人を見込む。
中国ではこうした高度な設備を備える医療機関は少なく、検診を受けるのが難しいという事情も人気の背景にある。個人旅行で来日し、大阪城や清水寺などを観光。オプションで1日を検診にあてる。無保険のため検診と通訳だけで約40万~60万円かかるが、中国人からは「サービスがきめ細かく、医師の説明が丁寧で安心」と好評という。
日本旅行と提携する中国・北京の旅行会社「優翔国際」は「がん早期発見の検査が確立され、誤診も少ない日本で、検査を受けたいと望む裕福な中国人は着実に増えている」とみる。徳島県は3月、徳島大病院での糖尿病検診と、阿波踊り体験や鳴門渦潮観光を組み合わせたツアー(3泊4日)を県の事業として実施、中国からモニター27人を招いた。
県によると、参加者からは「日本には先進的な設備があり、優秀な医師もいる。観光とセットなら魅力はさらに増す」との声が寄せられたという。
観光庁によると、世界の医療観光市場は2012年度には約10兆円規模まで成長する見通しで、同庁は国内医療現場の受け入れ態勢について調査を始めた。医療観光に詳しい真野俊樹・多摩大教授(医療経済)は「最先端の医療設備は今後、中国でも徐々に整うと考えられる。将来を考えれば、日本の先進医療技術を生かし、治療受け入れに力を入れたほうがいい。そのためにも、ビザの発給や更新のスピードアップ、医療用語が分かる通訳の確保といった課題を解決するべきだ」と話している。
(2010年5月10日08時33分読売新聞) 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

しかし、医療産業を経済成長のエンジンにしようとするライバルは多く、日本同様に資源に乏しいシンガポールもそのひとつです。
2000年から米英の大手製薬会社など100社を誘致し、「アジアにおける医療の開発、生産拠点になる」と意気軒昂、メディカル・ツーリズムでも年間数十万人の外国人が訪れています。
シンガポールでは、国家政策として、あらゆる手段を使い、世界中から研究者、投資を呼び込み、他国との格差をはかろうとしています。
日本のメディアはビザ発給条件の緩和後、もっとも利益を得るのは日本のメディカル・ツーリズムだと予想していますが、問題点も指摘されています。

①MRIやCTの保有率は医療先進国と比べても高いのだが、海外諸国に認識されていない。 

②国際的な医療水準の指標となるJCI(**)の取得が圧倒的に遅れている。 

③医師の間に国際競争力を高めようという意識が浸透していない。 

③に関しては、分野・地域によっては深刻な医師不足により、現場の患者をどう救うかという緊迫状況におかれた医師が、国際競争力の向上に意識を馳せることができないという現実もあるようです。
日本の優秀な医療技術・サービスを<産業>としての視点で捉え、低迷している経済成長への一つの足がかりとするのであれば、上記問題点を踏まえて、一貫した政策の下でインフラを立て直し、早急により具体的な戦略を立てる必要があるのではないでしょうか。

 

<用語説明>
*PETとは、体内の臓器・組織の糖代謝や血流、酸素代謝といった機能を測定し、画像として映し出すものです。放射性原子を薬に結合させた放射性薬剤を静脈から投与し、薬剤が体内に行き渡った時点で、それが出す放射線を体外からPETカメラでとらえます。これによって放射性薬剤の分布(各組織がこの薬剤をどの程度取り込んでいるか)が明らかになり、この情報からがんの有無のほか、脳や心臓の機能状態などについて知ることができます。
 最も多く使われている放射性薬剤は、ブドウ糖の一種に放射性物質を結合させたFDGです。がん細胞は分裂が盛んでブドウ糖代謝も激しいので、普通の細胞よりFDGを多く取り込みます。その様子をPETカメラでとらえれば、がん細胞のありかがわかります。
 がんの治療方針を決めるためには、がんの大きさや位置、転移の有無を知ることが不可欠です。転移のあるなしで、手術をすべきかどうか、抗がん剤による治療にとどめるべきかどうかなどが決まってきます。治療後の再発の有無を調べることも重要です。全身を撮影できるPETは、こうした検査に大変有効です。
  ただ、がん細胞であれば必ず見えるというわけではなく、肺がん、大腸がん、乳がん、悪性リンパ腫などが主な対象です。また、がん以外にもてんかんや虚血性心疾患の検査も可能で、これらの病気では細胞の活動が低下するためFDGの取り込みが通常より少なくなります。以上の疾患についてはいずれも保険適用がなされています。このほか、食道がんや子宮がん、卵巣がん、アルツハイマー病などについても厚生労働省に対して保険適用の要望を出しているところです。

 
  
サイクロトロンで放射性同位元素を製造し、それを化合物にくっつけて放射性薬剤を製造し、その放射性薬剤を患者さんに投与して、放射能の分布を断層写真に撮る。
FDGは、ブドウ糖によく似た物質に放射能をつけた放射性薬剤で、がんや脳細胞、肝臓など、ブドウ糖を使っているところに集まる。尿にも排泄される。
この患者は肺がんの患者で、肺の原発巣(*)とリンパ節転移(**)にFDGが集まっている。PET検査では、多くの種類(全部ではない)のがんに関して、転移や再発の有無や場所が正確に診断できる。がんはどこまで進展しているかによって治療法が変わるので、PETがきわめて有用である。
 

**JCIとは、Joint Commision Internationalというのは、病院認定専門の国際非営利機関です。The Joint Commission(1951)というアメリカの医療機能評価機構の一部門として、審査をパスした世界60カ国の病院にJCI認証を発行しています。母体は、JCAHOというアメリカの医療機能評価機構で、こちらはアメリカ全土の80%以上の病院に認定を与えています。

 

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