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「高額療養費制度」の問題点 PartⅡ <高額がん医療費>

2010-05-27 14:10:07
今回 PartⅡでは、<高額がん医療費>に対する「高額療養費制度」の対応と課題に関して、お伝えしたいと思います。
 
『「お金がないから治療できない」を防ぐために作られた「高額療養費制度」。だが、がん患者から「使いにくい」の声が上がる。理由の一つが、現役世代は収入がかなり低くても、月に8万円超の医療費を払わないと適用にならないこと。効き目も高いが高額な薬の使用が主流になる中、「医療費を払ったら暮らせない」の声が上がっている。(佐藤好美)』
2010年4月30日 産経新聞記事 http://sankei.jp.msn.com/life/body/100430/bdy1004300724000-n1.htm
 
具体例として、約6年前に乳がんが判明し、手術で右乳房を全摘した会社員の桜井なおみさん(43)の体験が述べられていました。桜井さんは、入院で4週に一度抗がん剤治療を受け、その後、放射線治療も受けました。
          「主な費用」 ・手術(2週間入院)                    約 26万円<窓口負担>
・化学療法(1回の入院につき) 約7.5万円
・放射線治療               約 15万円
上記のほか、後遺症のリンパ浮腫を抑える弾性ストッキングやエアマッサージャーの出費、そして5年間にわたる再発防止の薬代、入院に必要な洗面具やパジャマなど、保険適用でない諸々の費用も加えると、この6年間に約350万円に到りました。

『「手術代を払ったときは『手術って安いんだ』とさえ思いました。高かったのは抗がん剤。家賃と同じだけかかる感じでした」と話す。
桜井さんは会社員だから、窓口負担は3割。高額療養費制度では「一般所得者」にあたる。70歳未満だから、払い戻しの目安になるのは自己負担がおおむね月額8万円以上。それ以下だと払い戻しはない。手術を受けた月は適用になったが、月単位だとギリギリで達しないこともあり、制度に助けられた感じがしない。 治療のため仕事を休んだから収入が大幅に減ったことも痛かった。収入減で手取りの半分近くが治療費になっても、高額療養費制度ではやっぱり「一般所得者」。』<同産経新聞>
 
がんは治る病気になってきていますが、その治療は、辛く、長く続きます。生き延びる為の高額な治療費を捻出する患者の経済に対するケアが必須なのではないでしょうか。

昨今、乳がんでは抗がん剤が効果を発揮しているようですが、以下、福島県立医科大学の相良浩哉医師の談話を基にした「がんサポート」の記事です。
<「がんサポート」2003年11月号http://www.gsic.jp/for/fr_02/kim/index.html
 
『「患者さんから涙声で『もうこれ以上治療が受けられない』と言われるんです。これはつらいです。何とかしなければ、と思いました」』
『「実際、最近の乳がんの治療費は保健診療でも高いんです」(相良医師)最近の乳がん治療の進歩は日進月歩。新しい抗がん剤が次々に開発され、成果を上げている。しかしその一方、治療費の方もそれに連れてどんどん高騰し続けている。なかでも問題なのは、進行再発乳がんの治療費だ。進行再発乳がんに対して、現在一番効果的とされる治療法は、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)とタキソール(一般名パクリタキセル)の併用療法だが、両方とも週毎の投与が必須で、ハーセプチンの費用は約7万円、タキソールは約4万円。3割負担の保険診療でも月に13万円強にもなる。しかも、これは純粋な治療費のみで、実際の費用としては、他に診察料、採血検査料などが含まれるからもっと大きな負担となる。
加えて、もっと問題なのは、この治療に終わりがないという点だ。再発防止を目的とした補助療法なら一定の期間治療をすればすむが、再発がんの治療の場合、治療効果を上げている限りはずっと続けていく必要がある。つまりそれだけ大きな出費が永遠に続くことになるわけだ。これも厄介な問題だ。』
 
患者から高額な治療費に関する相談を受けた相良医師は、経済的負担を少しでも減らす対策を考え、パンフレットを作り、患者たちに話をし、また乳がんの患者会などにも提案しているそうです。その対策の一つが「高額医療費制度」の利用でした。また、まとまったお金を一旦は払い込まなければならない同制度の弱点に関しては、「地方自治体による一時貸付金制度」を推奨されていました。
 
対策の第二として、「臨床試験のグループに入ること」を挙げていらっしゃいます。
 
『臨床試験はがん専門病院や大学病院、大病院などを舞台によく行われている。とくに進行再発がん患者はそのチャンスに恵まれている。抗がん剤を用いた試験では、まずは進行再発がん患者から対象にして進めていくのが普通だからだ。ぜひ前記のような病院の医師に臨床試験の有無を尋ねて、チャンスがあれば試験を受けることをお勧めしたい。この試験に加われば、臨床試験に用いられる当該薬品の代金や諸検査費用はもちろん無料。その他に、協力費として交通費と食事代も支払われる。前記したように、抗がん剤や疼痛治療薬が高額であることを考えると、これは大きな軽減である。』
 
第二の対策に関しては、今回のテーマ「高額療養費制度」から離れますので、言及は致しませんが、<金が続かず死ぬよりは、臨床試験に身を晒すリスクを取る>という感が否めません。
 
さて、最初にお話させて頂いた桜井さんの体験で、『治療のため仕事を休んだから収入が大幅に減ったことも痛かった。収入減で手取りの半分近くが治療費になっても、高額療養費制度ではやっぱり「一般所得者」』という点に着目したいと思います。
 
再度、産経新聞から抜粋します。
 
『高額療養費が適用になる目安は、70歳未満の「一般所得者」で月に8万円超の支払い。厚生労働省は、この額について「ボーナスも含めた平均月収(約32万円)の4分の1(25%)くらいはご負担いただきたい」(保険局保険課)と説明する。1年以内に3回この額を超えると、4回目からは上限が4万4400円に減額になる。収入の25%の負担が延々と続くのは厳しいとの考えからだ。
しかし、70歳未満の「一般所得者」は大ざっぱに言って、単身で年収120万~600万円くらい。年収200万も600万も同じ負担だ。』
問題点が見えてきます。年収120万円も600万円も同じ負担ということですが、収入に応じ細分化した自己負担限度額の設定が必要なのではないでしょうか。また、先ほども述べましたように、がん治療は、継続して行わなければなりませんので、1年以内で4回目から上限が半減するのは、実態に合致していません。
 
治療方法が躍進している乳がんの場合は、比例して治療費も高騰しているので、特に制度の欠点が顕著に現れるようです。再度、産経新聞記事を引用します。
 
『乳がん治療の自己負担は「一般所得者」で初年度に約62万円。月別では高額療養費が適用になっても手術の月に9万円超を払い、8万円超の月が2カ月、その後1年近く4万4400円の負担が続く。
患者が仮に年収200万円(月収約16万6千円)の「一般所得者」だとすると、高額療養費が適用になっても負担は手術の月に57%、8万円超の月は50%に迫り、減額になっても27%が続く計算だ。さらに、税や社会保険料の負担もある。「治療を受けたら暮らせない」わけだ。』
 
景気低迷期にあって、確実に年収額は落ち込んでいます。年収300万円以下の方も増加している現状で、限度額の上限設定で経済困難に陥っている方も多い筈です。「一般所得者」の区分の見直しや、個々の年収に応じた一定割合の限度額設定にするとか、「高額療養費制度」の検討が望まれます。
 
最後に、NPO法人「東京地域チーム医療推進協議会(チームネット)」が計算した「手術+抗がん剤投与」の表の抜粋(千円未満 四捨五入)を参考に記載します。
 
■主ながんの「手術+抗がん剤」の治療費(例)
≪乳がんの場合の1年目自己負担額≫

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
9.5万円
5.2万円
2.7万円
8.2万円
8.2万円
8.2万円
4.4万円
4.4万円
3.0万円
4.4万円
11
12
1年目合計
 
4.4万円
4.4万円
61.9万円
 

  
がん種類
乳がん
 
胃がん
 
費用
治療費
自己負担
治療費
自己負担
1年目
353万円
61万9千円
227万9千円
42万4千円
2年目
194万6千円
34万5千円
21万1千円
6万3千円
3年目
50万2千円
13万6千円
15万円
4万5千円
4年目
25万7千円
7万7千円
15万3千円
4万6千円
5年目
25万7千円
7万7千円
15万円
4万5千円
合計
649万3千円
125万3千円
294万3千円
62万3千円
 
がん種類
肺がん
 
大腸がん
 
費用
治療費
自己負担
治療費
自己負担
1年目
247万2千円
43万3千円
198万9千円
40万2千円
2年目
19万4千円
5万8千円
14万7千円
4万4千円
3年目
11万2千円
3万4千円
14万7千円
4万4千円
4年目
8万円
2万4千円
6万4千円
1万9千円
5年目
5万9千円
1万8千円
6万4千円
1万9千円
合計
291万7千円
56万6千円
241万円
52万8千円
 
※いずれもステージⅡの標準治療に基づく手術代や治療費、薬代、処方料等。5年間再発無。
※患者は60歳男性(乳がんのみ50歳女性)窓口3割負担の一般所得者。

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