認知症の高齢者や障害者などの成年後見人に選任された親族による保険金着服や貯金等の横領事件が続出しております。
成年後見人の立場を悪用して、認知症の叔母の財産を横領した疑いで容疑者が逮捕されました。2010年4月10日の読売新聞記事によると「2005年3月、成年後見人を務めていた認知症の叔母(今年1月に89歳で死亡)の定期預金を解約して約350万円を引き出し、このうちの100万円を横領した疑い。」で、「県警は9日、日光市高徳、無職庄司一久容疑者(64)を業務上横領の疑いで逮捕」しました。「100万円は乗用車の購入代金の一部として支払っていた。」ようです。
その一ヶ月前の3月17日の同新聞の記事では、「新潟県では、認知症の母親に支払われた交通事故の損害保険金2,850万円を引き出し、旅行費用や車購入などに使ったとして業務上横領罪に問われた息子に、懲役2年4月の実刑判決が言い渡された。」と掲載されています。
また、成年後見人の横領事件数に関しては、「親族による業務上横領事件の摘発は2000~05年度は年間0~2件で推移していたが、06~09年度は計25件と急増。今年度は8件が摘発されている。」とあり、2005年までは、年間0~2件であったものが、2009年には年間平均約6件と急増しています。(2010年3月17日 読売新聞http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=22264)
「成年後見人制度」は 2000年4月に認知症や障害で判断能力が不十分な方を保護する目的で、成年後見人が本人に代わり財産管理や生活に必要な売買等の手続する制度としてスタートしています。ドイツの世話法、イギリスの持続的代理権授与法を参考にして、旧来の禁治産・準禁治産制度に代わって設けられました。介護保険制度とともに、高齢化社会を支える役割を目指した制度と言えます。
同制度には、裁判所の審判による「法定後見」と、本人の判断能力が十分な内に、将来判断能力が不十分になったときの為に候補者と契約をしておく「任意後見」とがあります。
「法定後見」と「任意後見」の違いは、下記です。
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法定後見
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任意後見
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後見人の選定
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家族・検察官等の申し出により、家庭裁判所が選定。複数人の選定も有り。法人(事業の種類及び内容並びに法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無検証後)が成年後見人になる場合も有り。
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本人が事前に契約(公正証書)により、後見事務の内容・後見人を決めておく。
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選任される方
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家族、弁護士、自治体や社会福祉協議会等が養成した市民後見人。
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本人に指定された方。
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後見業務の開始
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家裁の審判後。
65歳以上の方、知的障害者、精神障害者につきその福祉を図る為に必要があると認める時は、市町村長も後見開始の審判を請求できる。
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家裁による「任意後見監督人」(=お目付け役)の選人後。
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後見業務内容
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財産管理・生活に必要な売買、本人を代理しての法律行為あるいは本人がした不利益な法律行為の取消、療養看護等。
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事前契約内容に準じる。ただし一身専属的な権利(結婚・離婚・養子縁組等)は除外される。
また、本人の行った行為の取消権はない。(ただし、クーリングオフ等に関しては、日本成年後見法学会で取消権を行使しうるとの意見有。)
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報酬
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家裁で特に定められない限り無償。
第三者が後見人に就任する場合は、1年程度経過後に報酬付与の申し立てに基づき、家裁が本人の財産状況、事務量や内容を勘案して報酬額を決定する。
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任意後見契約において支払額や方法を取り決めない限りは、民法648条に基づき無報酬。
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その他
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本人の判断能力の程度に応じて「後見、保佐、補助の3類型がある。
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成年後見人制度を悪用した事件が、増加している理由として、下記が挙げられています。
①後見人の資質に問題がある。あるいは後見人が義務を理解し、役務を全うできるような指導、研修が十分でない。
後見人となる方の割合は、下記の通りですが、約80%を占める家族・親族の方は、財産管理や遺産分割等における専門的な法律知識を持っているとは限りませんので、的確な支援が必要と思われます。
家族・親族 77.4%
第三者後見人 22.6%
【第三者後見人内訳】
司法書士 8.2%
弁護士 7.7%
社会福祉士 3.3%
法人後見 1.0%
友人・知人 0.5%
その他 1.9%
(2005年最高裁判所事務総局家庭局編成 成年後見事件の概況による)
日本成年後見法学会理事長の新井誠・筑波大教授によると(前述した読売新聞3月17日記事掲載)、「海外では後見人が講習を受ける機会があるが、日本では選任の通知とともに制度に関するパンフレットを送るだけ。後見人を監督する家庭裁判所の人員も不十分。」ということです。
重ねて、新井教授は「何のノウハウも持たず成年後見人になるのは無理がある。裁判所や厚生労働省、自治体などが連携してサポートすべきだ。家裁の役割を一部弁護士や司法書士が担えるようにするなど制度の見直しも必要」と話しています。
また、専門職従事者(いわゆる士業)による第三者後見人を「職業後見人」といいますが、その職業後見人には通常月額3~5万円の報酬を支払わなければならないようです。とろが、後見人制度を利用せねばならない状況の高齢者の方で、後見人になる家族がいない場合、本人の資力が無い為にその報酬を支払うことができず、結果、職業後見人を付ける事ができないという問題がありました。
その問題解決にもなりますが、近年、都道府県や日本成年後見法学会では、後見人の養成が急務と考えており、「市民後見人」の養成講座を開催したり、後見人の育成に取り組んでいるようです。
そして、問題解決として「法人後見」という方法もあります。「個人後見」と「法人後見」との違いに関しては、法人後見のメリットとして、下記が挙げられます。
・長年に亘って継続する可能性を持つ事案に対応できる事
・資産が各地に点在する場合のように後見人業務の対象地が広範囲に及び事案に対処可能な事
・個人後見人では対応の難しい難易度の高い事案に対処できる事
②後見人制度自体が理解されていない。
例えば、山梨学院大・法科大学院スタッフ 額田洋一教授はこう語っています。
「制度が十分理解されていないために公正証書にしていない契約や、監督人が選ばれないまま『後見人』が代理人であるかのように振る舞い、財産を勝手に処分するケースがあるのが実態です。親の財産目当てに遺言を先取りする形で子供が親に任意後見人を持ちかけ、身内の間で親の身柄の取り合いに発展するケースもあります。」
続けて額田教授は、制度の活用には「地域社会の協力も必要でしょう。あのお年寄りがどうも認知症らしいと思えば本人と行政をつなぐために、役所などに連絡してこの制度を利用してもらうようにするのです。弁護士会でも老人クラブなどから依頼があれば、講師を派遣して制度を分かりやすく解説する講習会を開くところもあり、どんどん利用すべきでしょう。」と話されています。
いわゆる「団塊の世代」が65歳に到達する2012年には、高齢者人口は3,000万人を超え、2018年には3,500万人に到達すると見込まれています。今後、2.5人に1人は高齢者という社会の到来も推論されています。「成年後見人制度」のニーズは高まっていくでしょう。
誰もが、老います。誰もが、認知症や障害者になり得ます。高齢化社会において、「成年後見人制度」は必要な制度であり、それぞれが「成年後見人制度」を理解し、正当に活用していきたいものです。 |